研究科長あいさつ

新たな道すじを求める主役として 

ガバナンス研究科長 Ph.D.市川 宏雄 ガバナンス研究科長 Ph.D.市川 宏雄

21世紀は1990年代前半のバブル経済崩壊によって引き起こされた経済の長期的な低迷のなかでその幕が開けられました。その間、戦後の驚異的な成長の下で培われてきた日本人の自信とプライドは揺らぎました。グローバリゼーションが急速に進展し、国際競争力という点で日本の国力に疑問符がつきました。それでもリストラや運営システムの改変によってとりあえず元気を取り戻した日本の企業に、今度は、サブプライムローンの破綻に端を発した世界的な経済の不況がのしかかりました。しかも年3月には未曾有の災害が東日本を襲い、地震、津波、原発事故の連鎖で、再び日本を苦しめています。

長い間の保守政権のくびきから離たれた政治の世界も、新たな試練のなかで混迷をつづけています。住民は身近な自治体の行政運営に敏感になり、中央政府と自治体のあり方も問われています。これからの社会の運営にあたって、在来型の解決手法がそのまま通じません。問題解決の責任が社会を構成する人びと自らの手に委ねられたのです。すなわち、地域レベルでの政策の形成や運営に関して、関係する人びとの能力を強化することが喫緊の課題になっているのです。

公共政策大学院「ガバナンス研究科」は、こうした時代背景のもとで、専門職大学院として、あたらしい時代の政治や行政に対応できる人材を養成することを目的にしています。高度な知識と視野を備えた職業人を育成し、それらの人びとの政策作成や政策処理能力を高めようとするのが、この研究科の特徴です。あたらしい研究科を政府(ガバメント)と呼ばず、「ガバナンス」と命名しているのは、これからの政治や行政の理想型を意図しています。政府、自治体、それに住民や企業、さらにはNPOやNGOが力を合わせ、社会の運営にあたらなければならない協働の時代となっているからです。

この研究科では、実務や海外経験の豊富な教員と熱意にあふれる学生が一体となって様々な方策を考えます。現在進行形のさまざまな事例研究や課題についての発表など、参加者中心のカリキュラムが大きな特色です。市長や区長をはじめ、議員や公務員の皆さん、会社員の皆さん、NPOやNGOで活躍中の人びと、それに今後、政治の世界や公務員を目指す人びとなど、アカデミーコモンに集う皆が、それぞれ主役です。ガバナンスの主役は個人の潜在力とやる気から生まれ育ってくるのです。そして、この研究科に学んだ人びとは、ガバナンス・ファミリーの一員として、駿河台での年間が終わったあとも生涯にわたってそのネットワークを持続することが約束されています。

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